THE RUNNING 走ること 経営すること

Running is the activity of moving and managing.

他者の成長にコミットする、という人が集う会社

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先日面白法人カヤックの代表三人と忘年会をしてきました。ちょうどカヤックの上場一周年記念でもあり、お互いにこの一年の振り返りを報告しました。

 

カヤックとは5年ほどのつきあいです。発端は、とある会合で私が講師役を務めたときの話にたまたま参加されていたカヤックの代表のひとりである柳澤さんがなにかを感じたらしく、少したってから社外取締役を依頼されたことでした。

 

会合での話の内容は、一言で言うと「組織はそこに集う人のためにある」というようなテーマだったと思います。それを、上場プロセスを通して考えた企業価値や会社は誰のためにあるというような命題について、法務的な見地ではなく理念的な視点から話しをしたと記憶しています。

 

カヤックは経営理念を「つくる人を増やす」としている人中心の会社です。はじめてビジネスの話を伺ったときは、WEBデザインからソーシャルゲーム、そしてレストランなど多様な事業が行われており、「いったいなにをやりたい会社なのだろと」と戸惑いを覚えました。

 

しかも、事業的にも当社のようなB2Bオンリーではなく、B2Cハイブリッドでかつクリエイティブワークを中心としている、いわゆるクラスターが異なる世界です。「おれは役に立つのだろうか、いやそれ以上に、本業だけで手一杯の状況で他社の役員は無理だ」そんなことを考え最初はお断りしていました。

 

そんなかたくなな対応にもかかわらず、柳澤さん、久場さん、貝畑さんの代表三人の思いに応える形でお受けすることにしました。言語化は難しいのですが、三人のもつ独特の感性と「なにをしたいかよりもだれとしたいか」を大切にしているという話が心に響き、やってみようという気持になりました。

 

初めての社外役員の経験は刺激的でした。まったく異なるカルチャー、事業、そして事業そのものがわからない人間がどのように貢献するのかという模索、毎回が勝負でした。一番困ったのは、それまでディーバ社(現アバント)の社長としてやってきたままではまったく通用しないということです。

 

特に社外という存在は、代表取締役ではないので、どれほど自分がこうしたいと考えても、最終的な意志決定はゆだねなければならない。この一点においてとても苦労しました。

 

ディーバでは、あくまで事業を最初から立ち上げてきたことによる圧倒的情報量と人間関係という見えない資産を背景に持ち、しかも代表取締役です。最終的には自己責任ですべての意志決定をしなければなりません。そんな環境での意志決定になれすぎていたのです。

 

一方で、柳澤さん達の姿を見ていると、時々少し昔の自分を見ているような場面にも出会うことに気がつきました。創業者ゆえの事業に対する真摯さと、その真摯さゆえの視野狭窄というところでしょうか。「ああ、こんな場面、どこかで見たなぁ」真剣に自己主張してそのまま押し切ろうとしていたことなど、数え切れないほどありました。しかし、社内外の役員や人生の先輩方にずれを指摘いただくことで、成長を伴う軌道修正することができました。

 

そんなことを思い出しながら、社外役員の立場を堅く考えずに、僭越かもしれませんが、ここでは経営者として少し先輩としての経験から、コーチ役に徹しようと立ち位置を明確にして接するようになりました。そうすることで、私は自分の混沌から抜け出すことができました。彼らにとって私の意見が役に立ったかどうかは私にはわかりません。しかし、私自身が彼らとのつきあいを通して成長できたことは間違いありません。

 

当時明確な自覚はありませんでしたが、自分だけではできなかった成長を、「他者の成長にコミットする」ことで獲得できたという経験です。他者貢献が自分を幸せにするということは頭ではわかったような気になっていましたが、行動まで昇華できていないなかでの経験でした。

 

その後、ある程度コーチの役目を果たしたと感じた段階で立場を取締役からアドバイザーへと変えさせていただきました。コーチというものは、なあなあになってはいけない、これ以上踏み込むと相手のガバナンスにマイナスになる。上場に向けては自分たちの力量で進んだ方がよいと考えてのことでした。そして、昨年12月、上場企業として新たなステージに立たれました。

 

自分の会社のことで精一杯という、自分の成長しか考えていなかった自分を、他者の成長に役立つことで実は自分をもっと成長させることができるんだということを教えてくれたのがカヤックの三人です。

 

さて、忘年会では、そういったことがその後の様々な経験や、私にとってのコーチとの出会いによってようやく腹落ちしたという話、そして人の成長に役立つことの愉しさがわかってきたという話をしました。その中で柳澤さんから出てきた言葉が「他者の成長にコミットする」です。私は「つなぐ義務を果たす」と表現してオフィスの机の前にも貼っているのですが、今ひとつ昭和、明治?な感じでこれじゃ今ひとつ伝わらんかなぁと感じていました。聞いた瞬間にこれだ!と感じました。伝わりやすいですね。

 

「他者の成長にコミットする人が集う会社」、そんなカルチャーをもつ会社にして行きたいと思います。

 

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