THE RUNNING 走ること 経営すること

Running is the activity of moving and managing.

マキシマイズからオプティマイズへ

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数年前、会社のミーティングでさかんにマキシマイズ(最大化)からオプティマイズ(最適化)へという話をしていました。オーバートレーニングや不適切な練習方法で身体を壊すアスリートのような会社であってはならないと言う趣旨です。人の成長のための事業成長を目指すという創業以来の価値観と現実のギャップに対する強い問題意識が背景にありました。しかし、企業価値の最大化を謳うコーポレート・ガバナンスコードの言葉に押され、言葉としてのオプティマイズは陰を潜めてしまいました。

 と言うのも、企業価値の最大化を考えるほど、会社のみならず社会にとっての最善、最適(オプティマイズ)なあり方を考えることになるからです。しかし、個人的には最大化という言葉の持つニュアンスへの違和感が拭えません。企業価値のような人間が生み出した抽象的な概念には限界はありませんが、実際の事業活動はより具象的です。人の健康、社会モラルや自然環境など様々な制約や限界を持つバランスの中で行われるものです。事業活動そのものを最大化という文脈で行う事には限界があります。

 経営者は企業価値を最大化する事が務めです。しかし企業価値を最大化する目的は、人のためであり、単なる経済的価値を高める事ではありません。現実の事業活動の最適化を飛ばして企業価値の最大化だけに集中すると、経営者が当然持つべきモラルのようなものが軽くなるように感じます。企業価値の最大化は本質を突いてはいるのですが、前提となる視座によっては危険を伴う諸刃の刃です。言葉には力がありますので短絡的に迎合して使うことに危うさを感じます。

 経営において優先すべきは事業活動の最適化である。その結果企業価値は最大化される。私にはこちらのほうがしっくりきます。最大化という利己的な発想よりも、社会全体においての最善を求める最適化という視点のほうが、事業の構想や発想も柔軟かつ創造的になるからです。私たちは企業価値というものをオプティマイズの視点から磨きたいと考えています。