450年続く創造への挑戦
先日、東京国立近代美術館で開催されていた「茶碗の中の宇宙」という企画展を見てきました。千利休の美学を形にして茶碗に新たな価値を生み出した長次郎から450年にわたり一子相伝という方法で受け継がれてきた楽焼茶碗の全世代を一気見するものでした。
まず、長次郎の「大黒」という茶碗に釘付けになりました。
それから、当代の楽吉左衛門さんの音声ガイドで先代に対する強烈な尊敬と自らの存在価値を問い続けた苦闘があったことを聞き、15代つないできた450年が継承というよりも創造へのあくなき挑戦の歴史であったことを知りました。
初代の技を受け継ぐだけでなく、先達すべてを超える自分の表現を創造してきたという偉業を知ることで、これまで興味の無かった自由すぎる近現代美術に突然興味が沸きました。
作品の魅力は、パッションへの共感から生まれる
そんなこともあり、NYの近代美術館MOMAに行ってきました。
すべてのアーティストは、自らの作品で先達すべての偉業を超えようとしている。そう考えるとピカソやポロックといった抽象化が進んでよくわからないと思っていた作品に感情移入できるようになりました。
単なるメルヘンチックな絵としか見ていなかったシャガールも当時の人が受けた衝撃を感じることができました。最近の作品の中には泥の水槽に泡を立てるようなものもあり、思わず「おー、ここまで来たかぁ」とニヤニヤしてしまいました。
これまでは、自分の好みだけでアート作品を見ていましたが、先日の「茶碗の中の宇宙」で創った人への感情移入を試みると、まるで作品を通して作家と会話しているように楽しくなることに気づきました。
自然と異なり、人がつくったモノやコトの魅力とは、機能やデザインだけでなく、それを創った人のパッションに対する共感から生まれるという当たり前の事実を再認識していろんな作家と対話を楽しみながら、自分のパッションもさることながら、メンバー一人ひとりのパッションをもっと感じられるようになりたいと感じたMOMAでした。
PS:NY、一見変わらぬようにも見えて(1枚目:フラットアイアンビル)、常に猛スピードの新陳代謝(2枚目:日常的なミッドタウンの再開発)を繰り返しています。(3枚目:遠くにワンワールドトレードセンタービル)