以前、富士スピードウェイの本コースで走行機会があった時のことです。講師から運転の基本をレクチャーしてもらったのですが、長年車に乗って来たにもかかわらずシートポジションもハンドリングも正解だと思っていた事と異なっていて驚きました。シートポジションはいつも低め、ハンドリングは引き手を基本にしていたのですがいずれも逆でした。
中でも印象的だったのは、常に行きたい方向に視線をロックオンしてコントロールすることです。それまではカーブ時の視線など特に意識していなかったのですが、練習ではカーブ手前で従来見ていた所の遙か先、そのカーブを脱出するポイント(クリッピングポイント)のさらに先に視線をロックオンすることを徹底されました。ヘアピンカーブだと斜め後ろを振り返るぐらいの感覚です。
現在の進行方向から目をそらす行為なので慣れないと怖いのですが、その恐怖とは裏腹に未来の進行方向を見ないでオーバースピードギリギリの速度で突入した場合コースアウトしてしまいます。
考える余裕の無い速度や状況になると
人は無意識に自分の見ている方向に車を誘導するのだそうです。
あぁ、なるほど。。
リスクが高くなるほど行きたいところを意識的に見ろということか。
経営で使っているKPI(注)に対するモヤモヤがすっと解消された瞬間です。
KPIには、売上高成長率や利益率、ROEなどの会計情報を中心としたものから、顧客満足度や社員満足度のような非会計情報をベースとしたものまで様々なものがあります。
会社の業績は決算によって明らかになるのでどうしても会計情報を基本としたKPIのほうが使い勝手は良いのですが、会計KPIはスピードメーターのようにリアルタイムであったとしてもその時点の状況と結果を表すには長けていますが、事業の進むべきビジョンや価値観を示すには不向きです。
それゆえ、企業は創造力をもってビジョンや価値観を投影するKPIの発見、工夫にも力を入れる必要があります。一見、会計KPIとの相関が見えづらくとも、本当に重要な価値観を体現できるKPIをよりどころに日常の事業活動を行うことができれば、結果は自ずとついてくるでしょう。
会社を創業した頃は「ビジョンや価値観は日常の行動で示すものであり、非会計KPIなど不要だ。結果は財務諸表で測定されるのだから、それでいい。」などと言っていましたが、組織が成長し事業が発展するほど経営理念やビジョンの整理と同時に、それらを行動に転換する創造的KPIの重要性を強く感じるようになってきました。
さて、あとは実践あるのみ!
注:KPI:Key Performance Indicator:経営などの活動において、その活動を健全に行うために重要な指標のことです。体脂肪率や安静時心拍数は健康状態を知る目安になりますが、こういったものもKPIの一つです。