THE RUNNING 走ること 経営すること

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上場企業にとっての赤字とは、ハードルレートと資本効率

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取締役会で監査役より「資本調達コストを下回ったら赤字と考えろ」との一言。起業以来、継続は善との考えを元に事業継続のいろはのいとして「赤字は悪」を徹底してきた者として資本効率の重要性が頭では無く情緒的に腹落ちした瞬間でした。

創業の頃、当時有望なベンチャー企業が赤字を重ねたため銀行より資金を引き揚げられ倒産する姿を目の当たりにしました。実際に資金調達でも苦労したため、最低限の存続要件として着実に黒字を確保する。そう心に刻んで経営に当たってきました。

 

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今では日本の資金調達環境も大きく様変わりしました。資金提供者の主役が銀行からファンドへと変化し資金調達も借入から資本中心となりました。その結果、一般的な経営指標に株主資本に対する利益率など資本効率を測定するものが加わりました。

上場企業は各社の状況に応じた資金調達コストが算出されますので、それを上回る利益を上げなければ資本の運用に失敗しているという事になります。と、頭では理解していたのですが、かつての「赤字は悪」のような情緒的規律には至っていませんでした。

 

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そんな中での冒頭の一言でした。資本効率がハードルレートを割ることは、銀行借入に依存していた頃の赤字と同じくらい悪である。少々乱暴ですが、赤字という言葉を聞くことで当時の恐怖感がよみがえり、その重要性を経営の規律として強く意識すべきと再認識する機会となりました。

 

(追記:再認識の背景)

資本を使った戦略の実行にあたり、資本効率指標の一つであるROEを毀損せず企業価値向上を実現する難易度の高さを体感するようになったからです。

投資に値する未来が無ければ、余剰資金は投資家や社員へ還元すべきです。しかし、未来の成長に対する段取りとしての投資無くして事業の持続発展はありません。

それを未来の倒産と捉えると、創業の頃に覚えた資金ショートで倒産させる事への恐怖に似たものを覚えます。

しかし、その恐怖感が暴走すると投資も暴走しかねません。

この暴走と怠惰に対して経営をただす規律としてROEやROICを意識する事は役に立つ。そのような位置づけで資本効率指標を見るようになった事が背景です。