経営はバランスだ、食事はバランスが大切、ワークライフバランスだ、などなど、普段から「バランス」と言う言葉を頻繁に使っていますが、果たしてそのバランスとやらをちゃんと理解しているのだろうか。ふと我に返ることがあります。
辞書(大辞林第四版:三省堂)によると、「バランス 〖Balance〗釣り合い。均衡。」
なるほど。では「つりあい」〖釣り合い〗は?と引いてみると、「①釣り合うこと。均衡。調和。バランス。②力学で、一つの物体に働くすべての力の合力がゼロとなって、重心の動きが変わらない状態。動いている力が二つのとき、力の大きさは等しく互いに逆向きである。平衡。」とあります。
「均衡」は「いくつかの物事の間に力や重たさの釣り合いがとれていること。平衡。バランス。」バランスという言葉のイメージ通りですが、その釣り合いとやらが一体何を指すのかいまいちわかりません。
そこで、釣り合いと均衡の両方にあった「平衡」を引いてみると、「①物事の釣り合いがとれていること。また、その状態。②力学的に釣り合っている状態。力学的平衡。③系の全エネルギーが変化しない状態。熱平衡。様々な系について、状態が変化しない場合に相平衡・化学平衡・放射平衡などが定義されるが、いずれも熱平衡の特殊な場合である。」です。
平衡の③にヒントがありそうです。そこで「系」を引いてみると、「①ある関係のもとにつながった統一体。体系。②[corollary]一つの定理から派生形に導かれる命題。③地質時代区分の「紀」の期間に形成された地層・岩体。④[system]物理・科学・生物などの分野で、一定の相互作用や相互関連のもとにある、もしくはあると想定されるものから成る全体。力学系、生態系、神経系、開放系など。
ここで、「バランス」を取るとは何らかの「系」、つまりシステムの状態が変わらないようにする事であるとイメージがついてきます。言い換えると、なんらかの「システム」のどのような状態がバランスのとれた状態であるかを知らない限り、本当のバランスは取れないと言うことです。
経営のバランスは事業を継続するためのバランスであり、食事や運動のバランスは身体というシステムを維持するためのバランスです。しかし、企業の不祥事から暴飲暴食や運動のやり過ぎなど、現実の様々な活動がバランスを欠いてしまうのはなぜでしょう。恐らく、システムの捉え方が小さすぎるためでしょう。
経営におけるバランスを、会社ではなく社会というシステムの中で考えるとESGやSDGsなどに促されずとも自ずと社会の持続を全体とした思考や行動が生まれます。食事や運動のバランスについても、個人の心身の健康というだけではなく、自分を家族やコミュニティなど自身が関わる「システム」の一部として考えるとそのバランスの取り方も変わるでしょう。
「系」・「システム」という視点を持つことで、本当のバランスが見えてくる。様々なバランス感覚を求められる時代であるからこそ、重要な視点であると感じています。