THE RUNNING 走ること 経営すること

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起業におけるキャッシュという現実と本質

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母の日ですね。バラが見頃です。

ベンチャーを起業したとき、とても役に立った本がありました。板倉雄一郎さんの「社長失格」です。小説としてもかなりスリリングで面白いのですが、ベンチャー経営のリアルが圧倒的な迫力で描かれています。

どれほどアイデアがや商品が素晴らしくても、キャッシュが回らなくなると倒産するのは当然ですね。しかし、その現実を知ることはなかなか難しいです。時代も年齢もあまり変わらない板倉さんの体験談は、とても貴重なものでした。

要は「キャッシュ」という事です。夢やビジョンだけでは事業を継続することはできません。しかし、そのキャッシュの調達先によって、経営のリスクや自由度は大きく変わります。

一番安全なのは、お客様からの対価としてキャッシュを調達することです。しかし、事業の成長スピードや変化への対応に必要なキャッシュのギャップがあれば、前借が必要になります。すでに銀行から借りられるだけの信用がある場合は、そこから調達して返済します。返済実績は信用という無形資産となり、さらなる借入を可能にします。

事業成長を加速したいときは、ベンチャーキャピタルなどから資本金として資金を調達する方法もあります。資本なので返済不要などと考えてはいけません。銀行借入よりも圧倒的に高いリターンを前提とした、経営者としては借金のようなものです。しかも経営権を差し入れているようなものなので経営の自由度は相応に制限されます。

「社長失格」の時代からは日本の資金調達環境もかなり変化しました。力のあるVCであれば強力なインキュベータや経営のパートナーになります。さらに、現在の日本国はスタートアップを積極的に育てていこうとしています。

そういう環境だからこそ、起業を志す、もしくはすでに経営している方々には「キャッシュ」の本質としっかり向き合うことが重要だと思います。実際に私自身、VCから資金を調達してからかなり後になって「最初に言ってよぉ」という思いをしました。

そんな経験から、私は企業価値を「将来キャッシュフローの総和として返済可能な借金」と定義するようになりました。これも一つの考え方です。それぞれが自分の経営哲学を磨き、とれるリスク、とるべきリスクを判断することが肝要ですね。