THE RUNNING 走ること 経営すること

Running is the activity of moving and managing.

従兄

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 身近な経営者の一人に従兄がいる。大手化学メーカーの経営者だ。昔から、寡黙でありながら、どこかじっくりと観察しているような、言葉は悪いかもしれないが、何を考えているのかわからないところがあった。それでいて、時々口から出てくる言葉は極めて明快に本質を突き刺す。そんな不思議な人であった。

 若い頃は研究職として海外にいたこともあり、経営とは無縁のキャリアを積むものと勝手に考えていた。そんな従兄に対して、父がかなり早い段階から、「あれは社長になるぞ」と言っていた。起業して、先に経営者としての道を歩み出していた私にとっては、まったくイメージがわかず軽く受け流していたが、いざ社長に就任した時は父の慧眼に驚いた。

 従兄は、本当は歴史や哲学に進みたかったらしい。しかし、伯父から、文系で飯が食えるのかと一喝されて理系に進んだ。それでも、機械工学や物理と異なり、組み合わせる要素によって、想定とは異なる結果が生じる化学という分野を選んだ。より哲学的であり、人間社会に近いからだと言う。

 そんな従兄が決断した経営判断が今、大きな成果を生み出している。中でも、自社の倍以上もある規模の会社に対する買収判断は、同業他社の経営陣からも高すぎると言われ注目を浴びていた。

 当時、本人に尋ねたところ、あっさりと、「あれは、化学会社の未来にとって、取るべきリスクであり、取れるリスクだ。」と淡々と言ってのけた。しかも、取るべきリスクという点においては、30歳の頃から考え抜いてきたことだと言う。ぐうの音も出なかった。さて、これがどのような未来につながるのだろうかと、信じつつも固唾を飲んで見守ってきたところ、ついに大きな飛躍として形になってきた。

 会社の未来の創り方は様々だ。自助努力でやれることを最大限やることが基本であるが、それだけでは不十分な場合も少なくない。しかし、新結合のような聞こえの良い戦略のもと行われるM&Aで成果を出すことは簡単ではない。

 長きにわたり、一途に会社の未来を考え抜き、その上で到来したチャンスを果敢に掴み取る。取るべきリスクの特定は一朝一夕にはいかず、しかも、取れるリスクへの備えも欠かせない。それを従兄ができたのは、どのような仕事に従事していようが、ずっと、頭は経営者だったからだろう。

 もちろん、ベンチャーとエスタブリッシュの経営はまったく同じものではない。しかし、会社の未来をつくる経営者としてのありかたに学ぶところは大きい。考え抜いた未来に向けて、備えを進め、時間はかかっても、大きな飛躍へとつながる経営判断をしっかりと積み上げていきたい。

 

MAKE TOMORROW!