THE RUNNING 走ること 経営すること

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テクノロジーの進歩によって進化した絵画表現

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写真はアンリ・マティスの「待つ」。東京国立近代美術館で現在開催されている「窓展」(2020年2月2日まで)で展示されているものです。

 

さて、このマティスの絵、「どこか変なところはありませんか?」

 

とは、「窓展」のギャラリートークでお話いただいたキュレーター、蔵屋さんからの問いかけです。

14世紀のルネサンス期以降、絵画は「一点透視遠近法」という三次元表現を磨き込んできたそうです。学生の頃絵画と写真を少しだけかじっていた私は、当時写真より美しい風景画としてターナーの作品が好きでしたが、一点透視図法による写真的な絵を正解と捉えていたからかもしれません。

余談ですが、マティスの「待つ」は1921〜1922年の作品。スナップショットの普及に貢献したカメラ、ライカの登場直前ですがすでに写真は普及期に入っていた時代です。なんとなく、iPhoneとライカはイメージ的にかぶります。

 

さて、その後の蔵屋さんのトークによると、マティスは写真の登場によって絵画表現の自由を得たとのこと。正確な三次元表現なら写真でいいじゃん、表現したいように描けるのが絵だ。という事だそうです。「待つ」。確かに写実性という点では引っかかるところがありますが、それらは何かを「待つ」人と情景の印象を強くし想像力をかき立てます。

「そうか、現代抽象表現のビッグバンは写真というテクノロジーの進歩によって引き起こされたのか」と、ピカソからバスキアまで近現代の絵画表現のあり方を唐突に感じていたモヤモヤが晴れた瞬間でした。

 

AIだBIだと情報技術の進歩著しい現在ですが、知識、画像、動画、音声、さまざまな情報を簡単に共有できるテクノロジーの普及は、これまで見向きもされなかった表現に新たな価値を吹き込む価値創造のビッグバンの始まりかもしれません。

私たち人間の感受性や表現の進化を夢想するインスピレーションあふれる企画展のギャラリートークでした。