THE RUNNING 走ること 経営すること

Running is the activity of moving and managing.

大人の遠足? もうすぐ第24回日本山岳耐久レース(ハセツネCUP)

f:id:runavant:20161002151914j:plain

三大ランニング祭りの大トリ、ハセツネ

来週10月9日から10日にかけ、第24回日本山岳耐久レース、通称ハセツネCUPが開催されます。場所は東京の奥多摩山域、あきる野市五日市中学校からスタートし奥多摩湖の近くまでをぐるっと取り巻く奥多摩の山々の登山道71.5キロ累積標高4832メートルを24時間以内に走破するというものです。

f:id:runavant:20161002153503p:plain

(赤い部分です。東京の西にはいい山があります)

個人的には2月の東京マラソン、7月の富士登山競走、そして10月のハセツネがランニングの三大イベントです。首都を走る東京マラソン、富士山をひたすら登る富士登山競走、そして奥多摩の山々を夜を徹して走破するハセツネとそれぞれ個性的かつ魅力的なレースです。

なかでもハセツネは24時間以内という長時間レースであることだけでなく、ナイトランが中心になること、エイドステーションも1カ所で水の補給のみということから他のレースと比べて断然装備の重要性が高まります。

装備の準備が楽しい

走力のある選手だとレース時間が短くなるので装備も軽くてすみます。逆にそうでないと気象条件や万が一の備えなど物量が増加し、一層タイムも遅くなるということなります。

走るということにおいて、軽いことは絶対的に有利です。しかし、ハセツネ用の装備では水だけでも2キロ以上です。必要なものを詰めていくと簡単に5キロを超えてしまいます。富士登山競走の場合は装備らしい装備はほとんど不要なので自体重を落とすことに注力しますが、ハセツネでは装備のほうに注力というか楽しみを見いだしています。

装備品のリストをつくり、昨年の利用状況を参考に必要な入れ替えを行います。新たに調達したものは練習レースで使用して本番利用するかどうかを判断します。そうやってひとつ一つ準備していくのは、まるで遠足の準備です。

なお、レースで設定されている24時間という制限時間は、少し速いペースで歩き続ければ走破できる時間設定なので参加者もそれぞれの楽しみ方を堪能しています。昨年36キロ地点の三頭山山頂付近で小休止の合間に携帯用コンロでラーメンを作っている人を見かけたときは、「おっ、いいな!」と思ってしまいました。

主要装備品の改善状況

日中の3時間から5時間程度のトレランでアパレル以外で必要な装備といえば以下が三点セットです。

・シューズ

・バックパック

・ハイドレーションシステム(水筒などの水分を携帯する道具)

天候が比較的安定してエイドステーションが充実していれば、エネルギー補給用のジェルや水分もほとんど必要ありません。バックパックも状況によってはなくても走れます。ところがハセツネの場合は基本的に補給も水も必要なものはすべて自分でしょっていく必要があります。ハセツネ用として必要になる装備品は次のようなものです。

・ヘッドライト:夕方から朝まで12時間以上はライトがないと走れない

・ストック:22.66km地点の第一関門、浅間峠より使用可能となる

・防寒具:天候により放射冷却があり、かなり冷え込む可能性がある

・食料:食欲は走行中に低下する、自分にあった食材の選択や摂取順番がカギ

・水分:不足すると一発でリタイヤリスクが高まる

・簡易サバイバルセット:転ぶこともある、眠さに負けることもある

個人的には上記以外に「塩」も必携です。汗を大量にかきながら意識がもうろうとして来たときの効果はてきめんです。

昨年の装備でもいけるのですが、実戦で改善の必要を感じた三つについて装備変更を行うことにしました。

1.まずハイドレーションシステムの構成を変更

人にもよりますが、2Lがひとつの目安です。かつて背中に水嚢を背負ってチューブで補給するタイプのハイドレーションを使っていたために残量がわからず、炎天下の中残り10キロ以上残して水を使い果たして走れなくなったことがあります。それ以来、残量のわかるボトルタイプを使っています。通常使用しているのは500ml程度の容量のボトルですが、それを二本持っても1Lにしかなりません。

そこで昨年は750mlを2本差しにして、バックパックに予備として500mlを入れていました。ところが、これが走るとかなりじゃまになります。しかも暗闇の中で転んだ際に1本どこかに落としてしまいました。関門を過ぎてから気がついたので戻るわけにも行かず少々焦りました。

そこで今年は水嚢タイプのハイドレーション2Lを復活させることにしました。水嚢に1.5L程度入れこちらをメインとして身体にフィットするタイプのフロント500ml×2のボトルを補助とします。これにより走行が安定し、かつ水筒ロスのリスクも分散させられます。

2.ライトを霧にも対応できるように構成変更

昨年はPetzlのNAOというかなり明るいヘッドランプをメインに、予備として手持のGEN325を持って行きました。光量は十分だったのですが、夜中、雨が降ったり霧が出たりという状況では光が霧に反射してほとんどなにも見えないような状況にしばしば陥りました。

試走してなんとなく道を覚えていたことや、前後にも人がいたことでなんとかしのぎましたがかなり気をつかいながらの走行でした。そこで今年は濃霧にも強いタイプのUltraspireのLumen600という腰ベルトと一体になったライトを調達しました。

先週土曜日に参加した、南高尾城山陣馬サンセットトレイルレースで日没後の雨の中で試したところ効果は絶大。腰の位置からの照射と少し黄色がかった光色により多少の霧であれば問題ありません。手持ち用のGEN325と入れ替え、今年はNAOとLumen600のコンビでナイトランを楽しみます。

3.ストックを軽量化

ストックを使えるトレイルレースは限られているのですが、ハセツネでは途中から使用することができます。私も普段はストックを使えるレースでも使用しないで走っているのですが、ハセツネはさすがに長いので昨年のレースで初使用しました。

やはりクワトロ(四駆)、登りも下りも平地でさえ四駆は強い。後半ストックを使用していない人とのペース感がだいぶ違うことに驚きました。しかし、ストックに頼りすぎました。50キロを過ぎたあたり、大岳山の手前あたりで一本、ポキッと折ってしまいました。

カーボン製で強度もあるものでしたが、岩の割れ目に刺さったものを無理矢理引っ張り上げたためさすがに耐えられなかったようです。幸い難所は越えていたのでその後の行程への影響はあまりありませんでした。ただし、なおせるものではないので新たに調達する必要が生じました。

使用していたものはむしろ気に入っていたので同じものを調達するつもりでしたが、偶然軽量のものを発見したのでそちらにすることにしました。GuidettiのPlumeです。なんと一本85g!二本で170g。昨年つかったものも超軽量でしたが355g。その半分以下という軽さに驚愕です。

難点は折りたためないこと。そのため、使用可能となる場所までは槍をしょった狩人のような格好で進むことになります。木が密集しているところなどは扱いにくいところもありますがこの軽さは使用時間が長くなるほど効いてくるのではと期待しています。

走るためにはいらないけど重要な装備

走ることとは直接関係ないのですが、後からふり返る際にGPS機能のついたアクティビティトラッカーが欠かせません。このブログでも時々Garminで計測したデータをつかって心拍数や行程をビジュアライズしていますが、現在使用しているGPSウォッチでは計測精度を高めると20時間ギリギリです。昨年は予備のバッテリーを持って途中で充電しながら走っていました。これが結構面倒で代替案も検討したのですが、データはしっかりとりたいので今年もこれで行くことにします。

もう一つがカメラです。途中写真を撮りたくなることはあるのですが、立ち止まるとペースが乱れるのでなかなか難しいところです。またスマホでは操作性がいまいちで行動しながらだとよい写真が撮れません。アクションカムも検討しましたが、現時点では購入には至っていません。現場の画像が撮れるとよいのですがこちらは次回へ持ち越しです。

大人の遠足

さて、今年のハセツネには2700人を超えるランナーや登山家がエントリーしています。中でも40代がボリュームゾーンで1200人超です。50代が600人弱、60代が80名弱、70代も10名です。20回以上の完走記録を持つ方が17名、10回以上が250名です。

継続性が高いスポーツでもあるので今後50代、60代のランナーは増えるでしょう。80代のランナーが登場するのも近いと思います。

山を走り歩くというこのスポーツは見た目のキツさとは異なり年齢を重ねても楽しめるスポーツの一つです。

ただ、超高難度のレースに注目が集まり、面倒さとか苦しさとか心身両面の壁を簡単にイメージできるのでちょっとハードルが高いように見えるのかのしれません。

たしかに自分自身レースで走っているときは、必ず「なんでこんなことやっているんだ」と後悔の気持ちが沸いてくるフェーズがあります。必ずです。ところが、それでも走り続けていると次第にそんな気持ちが薄れ、身体のキツさが増してくるに従って、走れていることにただひたすら「ありがとう」と思える不思議な感覚が強くなります。

そして終わるとつらかったことさえ愉しい記憶になります。

これが至福なんですよね。大人の遠足たるゆえんです。

少しでも長く愉しめるよう、無理せず遠足に行ってまります。