THE RUNNING 走ること 経営すること

Running is the activity of moving and managing.

理想的なパフォーマンスを出すための要素、マインド・ソウル・ボディ・エモーション

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富士登山競走から一月、久しぶりに一ヶ月近くオフシーズンと決め込んでほとんど走らず身体を休めています。未完走の再挑戦レースであるロングトレイルのSTYとバーティカルレースの富士登山競走とかなり難易度の高いレースにもかかわらずそれぞれ4月末7月末と少々詰め込みすぎました。4月末のSTYは再挑戦に成功したものの富士登山競走はリタイア、以来少々バーンアウト気味になっていたので来年の富士登山競争に向けてまずは身体をリセットです。

その間、来年に向けたトレーニング方針のようなものをつらつらと考えているのですが、今年の登山競走向けのトレーニング中に面白い事に気付いたので、それを活かしてトレーニング内容を修正しようと思っています。

きっかけは6月末頃の本番コースを使った練習での体験です。その日は本番コースの2/3程度を走る予定でした。体調が悪いという自覚は無くタイムはともかく0合目から7合目往復をやりきれないとは少しも想定していませんでした。走り始めも登山道が始まる馬返しまでのロードは苦しいながらも普段通りに走れていました。

異変を感じたのは1合目あたりです。急に朦朧としてきました。普段は6合目あたりから空気の薄さを感じ身体のパフォーマンスが落ちるところがいきなり1合目からフラフラです。ペースを大きく落とすと少し回復してくるので高度順応出来ずに酸欠になっているような症状でした。

とにかく身体が動かないので仕方が無いと割り切り、かなりペースを落としなんとか五合目まで行って戻ることにしました。下りは打って変わって元気です。すれ違うランナーや登山者に明るく挨拶しながら快適に下ってきました。

あれはいったい何だったのだろう?なんとなくモヤモヤしていたのでその後いろいろ調べてみるとどうやら自律神経失調症の症状に近いことがわかりました。ネットで簡単な問診票による診断が出来るのでやってみると「すぐに専門家に相談!」なんて結果が出ました。ありゃー、弱ったねぇ。。

普段から「森川さんは過緊張なんですよ」と医療系の方に指摘されても、「ははっ、そんなものは走って負荷をかければ解消できますよ」と笑い飛ばしていたのですが、こうなるとさすがに無視出来ません。

全体的な慢性疲労が原因だろうと、マウンテンアスリートの知人Rogerにリカバリー方法について相談してみたところ興味深いアドバイスが帰ってきました。「レースを点で考えるな、仕事や普段の生活も含めた総合的なサイクルの中でポジショニングしていけ」ということが大きな枠組みなのですが、その中でパフォーマンスのキーエレメントをマインド、ソウル、ボディ、エモーションに分解してそれぞれのコンディションに言及していた部分に「んっ?」と思わず声を出し反応してしまいました。

私自身は健康状態を心身の二つ、言い換えるとメンタルとボディの二つで認知してきました。しかし、ボディの疲労がなかなか回復しないことからボディの疲労を筋疲労、脳疲労、内臓疲労の三つに分解して疲労の特性に合わせた休養の取り方を工夫するようにしています。しかし、この発想はリカバリーにフォーカスして生じたもので現状の把握と対処にはある程度有効なのですが予防的・予測的にコンディションを整えることには不向きです。

一方でRogerのアプローチは抽象概念であるメンタル側を、マインドやソウルやエモーションに分解することでマインド側の健康管理を強化することができるものです。メンタルの健康状態はボディの健康状態にとって先行的なものですので、生き物である私たちの健康が最終的にはボディに集約されることを考えると、むしろこちらのほうにより力を入れて健康状態を認知するほうが良さそうだと、そのように受け止めました。

これまでは結果指標であるボディに重きを置き、先行指標であるメンタルとの指標比率を3:1としていたところを、3:3にするというものですからかなりの大改訂です。ただ、来年のチャレンジに向けてこの気づきには強い興味を覚えています。

さて、ここで問題です。メンタルの分解要素であるマインドとソウルとエモーションとはどのようなものでしょうか?

エモーションは普段使いの言葉なので比較的簡単ですが、マインドとソウルという概念が私にはなかなかピンと来ませんでした。どうやら、マインドとは決意のようなもののようです。どうしても達成したい目標や使命感のようなものから生じるものととりあえず整理しました。そしてソウルですが、こちらは信念、生き方のようなものです。宗教を持っていればその教義であり、磨き続けなければ光らない魂です。このソウル、考えれば考えるほど、感じれば感じるほどもっとも重要な要素であるように思えてきます。

 

(余話)

ランの話として書いていますが、実は会社経営は一足先に同じような転換を図っています。計測して改善することに役立つ会計だけではなく、未来の価値を創るファイナンスの発想のを取り入れることはグローバルに通用する企業を創るために欠かせない事を痛感しているからです。

実体の延長線上にある会計(ここで言う会計はキャッシュフローも含んでいます)とは異なり、ファイナンスとは将来価値の創造手段です。お互いに同じような数値を使うのでなんとなく同じ世界の話のように捉えてしまうかもしれませんが全く異なるものです。

特に現在の経済環境はファイナンスに偏重して来ているので実体を表すという意味での会計を軽視してファイナンスが暴走する傾向が強まっています。しかし、抽象的な経済の話は個人にはなかなかリアリティをもって感じる事ができないのでついついそのリスクに気がつかないで過ごしてしまうものです。

ファイナンスは重要である。しかし、実体がなかなかつかめない。そんな違和感というか、漠然とした恐怖感を補うためにどうしたらリアリティを感じる事ができるのかと過去数年いろいろと試行錯誤をしてきました。

そんな取り組みをしてきたこともあり、イギリス人である今回のROGERの話はファイナンスという技術を生み出したアングロサクソン的思考を理解するための一つのわかりやすいメタファーとして自分の中に入ってきました。どの辺がファイナンスと会計の関係かと言えば、未来の価値を創造するファイナンスがメンタルです。一方で会計で計測する実体がボディです。

もし、より高いパフォーマンスを目指すのであればファイナンスをもっと重視する必要があるが、実体経済の健康と統合していかないとどれほど大きな企業価値を一時的に生み出そうとも早晩破綻するということです。

ファイナンスを未来の価値創造の手段として使うが、それは実体経済として結実させるためにあるということはしっかり魂のレベルで磨き込んでおきたいと思います。