THE RUNNING 走ること 経営すること

Running is the activity of moving and managing.

イタイ経験から得られる学びの醍醐味:私たちはどう学んでいるのか

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「私たちはどう学んでいるのか」(鈴木宏昭)を読んだ。

私はどこかでいつも自分を疑っている。言い換えると、まともな判断ができているのかつねに自信がない。というのも、子供のころから自分の思い込みが事実と異なることで起こるイタイ思いを幾度となく経験してきたからだ。

いろんなイタイ経験を重ねるにつれ、少しは現実を理解できるようになっかたと言えば心もとない。しかし、ものごとの見方についてはずいぶんと変わってきた。知識が増えたと言うよりは、認知視点の変化である。

例えば、経営においては会社を商品として認知したのもその一つである。これはかなりの経験量を要した。会社は私物ではなく社会の「公器」であるべきだとする点は若いころから変わっていないのだが、かつては公器を国家や自治体のような社会に近いもののように考えていた。

しかし、海外企業との事業や資本提携がなかなか進まないイタイ経験を通して企業価値というものが世界共通の会社の評価であることを体感し、海外の経営者や投資家が言っていることが理解できないというイタイ経験を通して、今では持続的に企業価値を高めることこそ現代の公器の役割と身体的に理解している。

正直なところ、ガバナンスコードや教科書からの知識だけでは、それが本当に良いことだと心から信じて行動できるようにはならなかっただろう。実際のイタイ経験とつながって一気に認知のレベルが転化した。一種の悟りである。

では、なぜそんなイタイ経験ができてきたのかと言えば、創業の初志のおかげである。世界に通用するソフトウエア会社をつくるというビジョンの実現を通して100年企業という個人では成しえない持続的な成長企業をつくるという初志が経験機会を次々に生み出してくれている。

そんな自分の認知の変化の背景のようなものを本書を読みながら考えることができた。人の認知的変化を促す「創発する組織」へのヒントが詰まっている。