THE RUNNING 走ること 経営すること

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上場企業にとっての赤字とは、ハードルレートとROE

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とある役員会で監査役より「資本調達コストを下回ったら赤字と考えろ」との一言。起業以来、継続は善との考えを元に事業継続のいろはのいとして「赤字は悪」を徹底してきた者としてROEの重要性が頭では無く体感的に腹落ちした瞬間でした。

そもそも「赤字は悪」の原点は、黒字が二十年前以上の資金調達手段が限られた事業環境における銀行からの調達条件であった事です。有力なベンチャーが赤字続きのため銀行より資金を引き揚げられ倒産する姿を目の当たりにして、資金余力が乏しいほど短い期間で黒字を確保出来る事業体でないと事業が継続出来ない。そう心に刻んで経営に当たってきました。

 

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そんな日本の資金調達環境も大きく様変わりしました。資金提供者の主役が銀行からファンドへと変化し、資金調達も借入から資本中心となりました。そして、一般的な経営指標に売上成長率や営業利益率というオペレーション系以外に、株主資本に対する利益率など資本効率を測定するものが加わりました。

その一つがROEです。上場企業は各社の状況に応じた資金調達コストが算出されますので、それを上回る利益を上げなければ資金運用に失敗しているという事になります。と、ここまでは頭では理解していたのですが、かつて体感した「赤字は悪」という倒産への恐怖感のような情緒的腹落ちには至っていませんでした。

 

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そんな中での冒頭の一言でした。ハードルレートを割ったROEは、銀行借入を前提とした頃の赤字と同じくらい悪である。そりゃそうだ。何事も腹落ちしていないことは自ずと劣後してしまいます。言った本人は当たり前の事を少し言い換えたに過ぎないかもしれませんが、私にとっては金言の一つになりました。

 

(追記:なぜ腹落ちしたのか?)

企業価値の向上シナリオを複数立て、M&Aを含め実際の検証やアクションを進めるにつれ現在のROEを毀損せず企業価値向上を実現する難易度の高さを体感するようになったからです。

投資に値する未来が無ければ、余剰資金は投資家や社員へ還元すべきです。しかし、環境は常に変化します。未来の成長に対する段取りを付け続ける事無くして事業の継続はありません。

未来への段取りとしての投資が出来ないという事は、経営者として白旗を上げたも同然です。それを未来の倒産と捉えると、創業の頃に覚えた資金ショートで倒産させる事への恐怖に似た感覚を持つようになった事が背景にあります。

もちろんROEは絶対ではありません。未来の創造の為には短期的ROEは犠牲になる事もあります。

とは言え、事業活動の健全性を確保する規律としての損益計算書上の利益と同様に、投資活動をいたずらに拡大して破綻リスクを高めないための規律としてROEを意識する事は役に立つ。そのような位置づけでROEを見ています。