今年最後のトレイルランレースに参加してきました。上野原秋山トレイルレースです。過去に三回開催された上野原トレイルの復活レースということでしたが、2012年9月9日開催の上野原トレイルレースでは途中リタイアしています。
トレイルランを始めてから初めての関門リタイアでした。関門手前の急な上り坂で制限時間を迎えたとたんに、周囲の選手達ともども歩くスピードと肩を落とし、まるで落ち武者のように無気力な集団と化したことを今でも鮮明に覚えています。関門からは私を含む落ち武者の迎えに来ていただいた軽トラックの荷台に載せてもらいスタート地点まで輸送いただきました。まさにドナドナ状態です。
上野原トレイルレースは累積標高差3300メートルというかなりタフなレースで、まだ真夏のような天候の中、走力不足だけではなく脱水にも悩まされ、脚はあっとういう間に乳酸がたまり持ち上がらなくなってしまいました。
今回の復活レースは、距離は23キロと公表されていますが、手元のGPS時計では16キロ程度、累積標高差も1300メートル、参加選手も約400名程度と、打って変わって初心者にも愉しめるアットホームな大会でした。
アバントからはCFOの春日さん、経営管理部長の中山さんそして私の三人が参加。コースは登山道として解放されていないルートを含め、大会事務局の方々を中心にボランティアスタッフの方々によりきれいに整備され、落葉重なるふかふかのトレイルを満喫することができました。
印象的だったのはボランティアスタッフの対応やゴール間際の秋山地区の方々の声援です。山から降りてきてゴールまでの残り1キロ弱、地区の住民の方々に応援いただきました。中には自宅の縁側から声をかけてくるおじいさんもいました。比較的短いレースでこちらの体力と精神の余裕があったためか、いつも以上にそういった応援に感動しました。
私がトレイルランを始めたのは春日さんから勧められたことがきっかけです。春日さんは学生時代よりトライアスロンを始め、さらなる挑戦を求めてトレイルを始めた生粋のアスリートです。一方、私は仕事だけで精一杯で、自己管理もままならずいつも心身の健康に不安を抱えてきました。
それでも三十代のように気力体力ともにまだまだ盛んな時代は四半期ごとに発熱していても、特に気にすることもありませんでした。しかし、四十代に入ると同じやり方ではどうにもならないことが増えてきました。心身とも同様です。
人間の精神は身体と一体です。特別精神力の強い人は別ですが、普通の人にとっては健全な精神は健全な肉体に宿るという言葉の通りではないでしょうか。私自身経営者としてこれまで直面した厳しい状況を乗り越えるには、戦略の整理やその実行のためのコミュニケーションなどのようないわゆる経営業務に集中するだけでは不十分でした。
悩むことで心は弱くなり、身体も変調を来す。そんな悪循環に至ったことは数えきれません。そして、そういった事態を乗り越えるための試行錯誤を繰り返しました。内観、瞑想、写経をはじめさまざま試しましたがいずれも決め手にはなりません。私にとってただ一つ明確に有効であったのは、走ることと登ることでした。
走るためには気力がいるかもしれません。しかし、気力が無くても身体を動かせば気力がよみがえってくることを体験しました。しかも負荷は高い方がいい。そして、人のいない自然の中である方がいい。自然と山に通うようになりました。そんな原体験があった上での春日さんからの誘いでした。
私はトレイルランナーとしては凡庸です。しかし、経営者としてさらなる成長を目指す上でトレイルランから得られるものは語り尽くせないほどのものがあります。私が経営者として一番危険視しているのは「おごり」です。そもそも自らのおごりを自覚することが大変です。私はおごりを早期に検知できるよう、自分以外からのフィードバックを大切にしています。しかし、おごりとは、もうこの辺でいいという現状に満足した瞬間に生まれると感じています。
足るを知るという言葉があります。それはそれで重要な教えです。一人の人間としてはそうありたいと思います。しかし、経営者としては足るを覚えた瞬間に賞味期限が切れたと自覚すべきと考えています。
そうはいっても人間、成長限界になんどもぶつかります。年を重ねるにつれ自分の限界を知りあきらめもたくさん生じます。それでも、経営者である以上すべてに満足せず成長を追求するべきだと考えています。
トレイルランは、自分の体力、実力などの限界を冷酷なほど素直に教えてくれます。それでも、挑戦したい、完走したいという目標を置くことで、新たな知識を得て、それらを試し、いままでとは違う方法や考え方で挑戦し続ける愉しさをシンプルに教えてくれるスポーツです。
山をただ走るだけですが、人生をよく生きる知恵がたくさん詰まっているスポーツです。私にとっては、スポーツというよりも内観に近いかもしれません。RUNNINGという単語には走るという意味以外に、経営するという意味もあります。このブログでは、経営について、そして走ることについて、この両面を中心につれづれになるままに書いていこうと思います。