THE RUNNING 走ること 経営すること

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情報生産性を向上するために超えるべき三つの壁

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昨日は渡良瀬ハーフマラソン、フラットなコースを三周。天気予報を裏切る秋晴れのファンランでした。しばらく走れていない時など、レースへの参加は軌道修正の良い機会となります。

 

さて、今回は情報生産性の話。

当社の顧問でもある首都大学東京の松田智恵子先生曰く、「経営とは情報生産性の向上を追求するものである。」実体験からも経営実務はまさに情報生産性向上への挑戦であると言う実感があります。

情報生産性は最終的に企業価値で評価すべきと捉えています。労働生産性は人間を基礎としている事から人間の物理的制約によって向上限界が存在します。情報生産性も同様に、企業を基礎としている以上限界もしくは適正水準が存在します。ファンドが企業に投資をする際の指標の一つであるEV/EBITDA((時価総額+純有利子負債)/(税引き前利益+支払利息+減価償却費))は情報生産性を計る一つのKPIです。

 

そんな情報生産性ですが、これまでの経験からその向上には三つの突破すべき壁があると考えています。

 

①人間の認知能力突破への壁(グループ経営)

会社の成長で100人の壁や10億の壁、30億の壁など多少の差はあれど大凡50人~300人、10億~30億程度で足踏みをする例は少なくありません。理由は様々ですが情報生産性の観点から捉えると、経営者の情報処理能力、言い換えると認知能力が壁の原因です。多少の個人差はあれど、人間の認知能力に大きな差はありません。経営者が市場、顧客、社員などの総合的情報を一括して把握できる状況は高いパフォーマンスを発揮する事も出来ますが早晩個人の限界にぶつかります。壁を突破するためにグリッドコンピューティングの如く経営の意思決定単位の細分化が欠かせません。しかし、様々な理由で経営単位を分解する事は容易ではありません。ここに一つ目の壁が存在します。

 

②外部情報取り込みへの壁(フィナンシャルベンチマーク)

二つ目は、自社の成長を外部視点から見直す事が出来るかという点です。VCやPEの視点は企業の持つ経営資源や事業の立地を棚卸しして、企業価値の伸びしろを発見して行くものです。優れたPEは良質な外部情報を大量に保有し活用する事で投資対象企業の潜在的価値を見つけ出します。一方の企業は、自社が持つ顧客情報や事業のオペレーション情報を大量に持っているのでどうしても自社内の情報をベースに年度予算や中期計画を策定する傾向が強いのですが、同業や国内だけでは無く様々な業種や会社の企業価値(財務パフォーマンスではない)と相対比較する事ですでに起きている未来を成長を取り込む事が出来るようになります。では、外部情報を手に入れれば活用出来るかと言えば簡単ではありません。本業の社会貢献視点を要するので単純なファイナンス視点とも異なります。これが二つ目の壁です。

 

③未踏情報アクセスへの壁(ストラテジックM&A)

最後は公知では無い情報にアクセス出来るかという点です。ネットや情報ツール等で様々な情報にアクセスする事が可能になりました。しかし、他の企業や人がアクセス出来る情報だけでは情報生産性の向上にそれほど寄与しません。情報生産性の価値は情報の不平等で創られます。この不平等は知っているか知らないかと言う話ではありません。皆なんとなく知っているが、詳しくは知らないラストワンマイルに集中しています。VC等のインナーサークルもその一つです。とは言え事業会社の場合本業たる事業成長のための投資が目的です。単純にインナーサークルに入っていても使いこなす事は困難です。結局の所自ら事業価値の創造シナリオを描き、その加速のために必要な協力関係を築く、投資はその手段として活用すると言う事になります。その上で未踏情報へアクセスするのですから難易度は相当なものです。

 

以上三点、情報生産性の向上において超えるべき三つの壁は私にとっては「経営情報の大衆化」という当社のミッションを通して、お客様への貢献という視点でも真剣に解決したい課題となっています。

 

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