クリストファー・ノーラン監督の「インターステラー」をIMAXで観てきた。公開10周年記念の再上映である。この10年、SF映画の中でもっとも好きな映画だ。すでに10回以上は観ているが、いずれも劇場ではない。
土星を横切る星間宇宙船エンデュランスのシーンが圧巻だ。スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」の宇宙船ディスカバリーは木星へ旅した。原作は土星を目指したが映像化が困難で木星になったと、どこかで読んだ記憶があった。それゆえ、初めて「インターステラー」で土星を横切るシーンを見たときは息をのんだ。
(余談だが、宇多田ヒカルが椎名林檎とコラボした「二時間だけのバカンス」のミュージックビデオでは、宇宙船が木星を横切っている。)
それ以来IMAX再上映を心待ちにしていた。ようやく「ホントウのインターステラー」を見ることが出来た。
映像もさることながら、音響もすごい。ハンス・ジマーの音楽を、身体を震わすほどの迫力で包み込んでくる。
「2001年宇宙の旅」や、カール・セーガン原作の「コンタクト」と同じく、「インターステラー」もまた、私たちよりも遥かに進んだ生命体の存在を描いている。本作ではそれが時空を超えた未来の人類らしいことに今回はじめて気づいた。いろんな伏線が一気につながった。
何度も繰り返し観ていたが、絵面だけを追っていことに気づいた。TV画面だろうが、IMAXだろうが、情報としては違いが無いはずだが、体験の仕方で理解度がまったく違ってくる。不思議なものである。
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先日、宇宙飛行士の向井千秋さんの話を聞く機会があった。一つ質問し忘れたことがある。「宇宙に出ると価値観が変わる」という話があるが、実際にどれほどの衝撃があるのかというものだ。
宇宙は、地球上の自然のように、人間が生身のまま五感を使って触れることはできない。ゆえに、価値観に影響を与えるような身体的体験にはならないのではないかという疑問である。
この「インターステラー」をIMAXで観て、それが愚問であったことに気づいた。ホントウの宇宙に放り込まれたら、それが宇宙船の中であれ、宇宙服を着た状態であれ、五感は分子レベルでフル稼働するだろう。映画のサイエンス的テーマでもある「重力」から解き放たれる体験は地上では決して得られない。細胞が大騒ぎだ。
向井さんは、宇宙開発は人類のサステナビリティに役立つと話されていた。その時は、「まぁ、そうだろうな」とビジネス的に受け止めた。
「インターステラー」では、人類が地球で生存できなくなるほどの環境変化に対し、宇宙探査により重力の制御技術を手に入れ、宇宙空間に巨大なスペースコロニーを建設することを可能にている。
まぁ、ぶっ飛んだ話ではあるが、向井さんの言いたいことは、こういうことなのだろうと腑に落ちた。
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リアルビジネスの世界に生きていると、「儲かるかどうか」、そんな視点が強くなる。かなり強烈な重力場である。しかし、それは現在の経済システムという枠組みに中における常識に過ぎない。
重力場を突き抜けた先にある宇宙に思いを馳せることは、新たな成長環境を手に入れることと同じなのだろう。「宇宙?どうやって回収するの?」では、早晩進歩は止まる。「今と異なる環境でいかに生き抜くのか?」そのためのチャレンジを続けることこそが、実はサステナビリティの第一歩なのだろう。
夜空がきれいな季節になってきた。 そうだ、星、観よう。