◇ 45度
インドへ行ってきました。出張前にはデリーの気温が50度を超えたというニュースもあり、とんでもないシーズンに初めてのインド出張を計画したものだと少し憂鬱な旅立ちでした。
到着した日のデリーの気温は幸い40度程度、42度あった次の訪問地ジャイプールからバンガロールに移動、飛行機のタラップから地上に降りた瞬間おもわず「涼しい」と言葉がでました。スマホで気温をチェックすると30度です。
バンガロールは緑豊かで魅力的な都市です。ただ、渋滞がひどいため市内であっても一日三件の訪問予定を入れるのがやっとです。
渋滞といっても、日本でイメージする整然とした渋滞ではありません。車線など意味が無い混沌とした渋滞です。逆進車も当たり前です。それでも前に進んでいくのは不思議なものです。雑踏の中を人が歩くように車も動いていきます。
面白いのはそれほどひどい渋滞であっても、だれもイライラしていません。注意喚起でクラクションを鳴らすことはしますが、人もオートバイも車も牛も、混じり合って流れていきます。不思議な感覚です。決して心地悪いものではありませんでした。
最後にデリーで45度の中を少し歩きました。さすがに30分程度で車に引き返しましたが高温と現地の雰囲気を少しだけ感じることができました。
◇ IT産業の心臓部
グーグルのスンダー・ピチャイ氏、マイクロソフトのサトヤ・ナデラ氏だけではなく、IT業界におけるインド人の影響力はIT業界の人であればだれもが知るところです。
昨年マイクロソフトのレドモンドにある本社(キャンパス)を訪問したときは、そこで働く半数程度がインド人に見えました。
欧米企業は早くから製品開発やサービスのアウトソーシング拠点をインドに設置して優秀な人材を獲得してきました。そういった一連のアクションの氷山の一角がインド人IT企業のトップの誕生であり、レドモンドの風景です。
今回の訪問では、その氷山の本体を見ることができました。日本の製造業の強さが大企業とともに栄える中小企業の層の厚さにあったように、珠玉の中堅中小の現地企業がたくさん存在しています。わかっているつもりでしたが、実際に触れてみることで層の厚さに少なからず衝撃を受けました。
◇ カオス
インドは好き嫌いが分れると聞いていましたが、私にとってはまた訪問したいと思える国となりました。もちろんほんの表層に触れただけですが、人為の及ばない自然な人の営みと人が造り上げてきた社会的な人の営みが混じり合って共存している環境は、なにか本質的なことを問いかけてきます。
IT産業が栄えているといっても、通信環境は劣悪です。高等教育を受けてグローバルビジネスの最先端にいる人もいれば、100年前となんら変わらない生活を送っている人々がいます。モダンな建物と一緒にバラックが建っています。
とても「人」とひとくくりにできない人々が混在し、さまざまな動物も一緒に生きています。まさにカオスの世界です。私たちは社会の進歩によって自然を含め様々な現実から分離されて生きています。それだけに、私たちの住む社会とそうでない社会が溶け合っている、つまり「カオス」を感じられる環境は貴重だ。そんなことを感じて帰ってきました。
Photo: Qutub Minar, Delhi