THE RUNNING 走ること 経営すること

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無借金経営、今昔物語

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実質無借金経営と言う言葉は、会社の安定性を説明するときの常套句です。返済余力を持ち、自分の食い扶持が自分で稼げている事を言います。とは言え、事業成長において設備投資など大きな資金を必要とする場合は銀行借入れや市場から資本として調達する事が出来ます。将来的にキャッシュとして回収可能であれば前借りして事業を成長させる。当然の事です。

資金調達を借入れだけで行う場合はそのリスクをPL(損益計算書)的に体感する事が容易です。借金の総額と返済プラン、金利条件など調達段階で返済リスクが明確であり、借手がそのリスクを体感する事が出来るからです。

資本調達も経営者にとっては本来借金と同じです。十数年前には資本は返さなくて良いリスクマネーだと言う話をちらほら聞いた事もありましたが、世界的低金利もあり現在は銀行借入れよりも利率の高い資金調達方法であると言う認識が定着しています。

しかし、資本調達に対する借金は銀行借入のように感覚的に分かり易いものではありません。そこで幾つかの工夫をして借金的な感覚を養ってきました。

一つは、金利に相当する配当の考え方です。アバントではDOE(純資産配当率)を採用しています。預かっている株主資本に対する金利的な考え方で捉える事が出来ます。

分解式としてROE×配当性向となりますが、これだとPL的な事業経営感覚には今ひとつ響いてきません。

そこでDOEを使って資本調達コストを政策金利のような最低金利と考えると返済に必要な絶対額を意識する事が出来ます。その額を含めて黒字経営を徹底することが出来れば自ずと純資産も増加して翌年以降の配当額も増加します。これによって、意識しづらい資本調達コストをPL主体の事業経営に織り込むことが出来ます。

もう一つが元本返済に相応するのれんに対する回収です。

個人的に純資産と時価総額のギャップは経営者にとって将来必ずキャッシュとして回収すべき借金と認識しています。

時価総額とのギャップ以外にもM&Aの内容によってはBS(貸借対照表)上の自己資金をのれんに大きく置き換える事もあるでしょう。M&Aの場合純然たる会社の稼ぐ力だけでなく市場で取引される価格が強く影響するのでくせ者です。

のれんの回収期間は10年にも20年にも及ぶ場合があるので一人の経営者でそれを出来るものではありません。それでも不確実な未来に対して可能な限りのれん回収の段取りをつける事は返済義務の履行と同様です。毎年の事業や戦略の進捗状況は総合的な返済義務の履行のようなものと捉える事が出来ます。

そんな視点により将来に無理な借金を残さない事で事業の継続性を高める事が出来ると考えています。また、企業価値が将来キャッシュフローの総和であると考えると、事業の健全な存続期間が長いほど企業価値は上がります。

そしてなによりも、途中で破綻するとそこで大きく損や害を被る人が出ます。ゆえに、社会同様、企業も単なる成長の追求ではなく、持続発展を第一とした上での成長の追求が経営の最優先事項と考えてきました。当社の経営理念である「100年企業の創造」はそんな思いを背景としています。

成長に対するリスク取ることをを強く求められる上場企業として、持続発展を第一としつつも取るべきリスクをとって行く資本市場に対する実質無借金経営という発想を大切にしています。