時間を共にする場を失ったマネジメント
社会に様々な変化を促しているコロナ禍は、会社マネジメントにも影響を与えています。同じ場で時間を共にする事を前提とした従来のマネジメントもその一つです。リモートワークによって時間の管理者が、場を提供する会社から個人へと移っています。その対応のために成果主義やJOB型など、時間以外の尺度でのマネジメントの検討や導入が進んでいます。
長期的視点で非財務成果を可視化する必要性
しかし、事は簡単ではありません。会社の活動成果が財務成果で計測されるのは事実ですが、長期的視点に立つほど現在の会計やファイナンスでは表せない活動や成果が重要になるからです。しかも、長期的視点となると利害関係者がどんどん増えて、集中すべき事がぼやける危険性もあります。こういった状況でバランスを取るために、人が集まる場を使って臨機応変に対応する曖昧さを活かしたマネジメントが役立っていた可能性があるからです。財務成果につながる長期的視点である非財務成果を明らかにして成果主義などを設計しないと従来以上にバランスを欠いたマネジメントになるリスクがあります。
フランスの新法
2020年8月9日の日経新聞、仏ダノンのCEO、エマニュエル・ファベールさんのインタビューで、2019年にフランスの新法として制定された利益以外の目標を達成する責任を負う会社形態を取り入れた事が書かれていました。会社の定款にESG(Environment, Social, Governance)に関する目標を盛り込んだそうです。これにより、財務的企業価値だけではない視点からマネジメントへのチェックが入り、ステークホルダー資本主義という新たなコーポレートガバナンスのモデルに転ずる事が出来るとのことです。そこであげられていた取り組みの中には私自身やりたかった事もあり、個人的にも興味深い試みです。
経営理念をベースに非財務成果を可視化する
新しいワークスタイルに対応するために人事制度改革は必要です。しかしその前提となる長期的視点での会社のあり方の可視化も必要です。それは、経営理念を具体的な目標として明示することでもあります。私自身、経営理念と実際の事業活動が同期しない事を悩み続け、非財務成果の重要性を強く認識するようになりました。紆余曲折を経つつ、現在では財務パフォーマンスと、メンバーの幸福度、そしてあるべきビジネスモデルに対する到達度という少なくとも三軸で結果を計測するようになりました。経営理念の実現という点ではようやくスタートラインに立てた思いです。人のための会社であるために、オリジナリティをもって新たな会社の姿を形にしたいと考えています。